研究概要 |
iPS細はfeeder layer,LIF freeでCollagen Type IV coated dishに培養を移すと血管前駆細胞(induced Vascular progenitor cells,iVP細胞)へ分化する。このiVP細胞で免疫したBALB/cマウスにCMS-4線維肉腫細胞を移植すると、腫瘍の増殖抑制と生存期間の延長が認められた。iVP免疫マウスに形成された腫瘍は組織学上腫瘍血管の減少が認められたため、iVP細胞に対する免疫反応が腫瘍血管の形成を抑制している可能性が示された。さらに、iVP細胞のcell lysateをパルスした樹状細胞でBALB/eマウスを免疫すると、免疫マウスはCMS-4に対し強い抗腫瘍効果を示した。免疫マウスの腫瘍は腫瘍血管の形成が不良で、CD31+血管内皮細胞とASMA+血管周細胞の減少と配列不整が観察され、Tomato lectin perfusionによる検討では腫瘍血管の明らかな減少が認められた。CMS-4腫瘍は血管に富むが、腫瘍血管の発達が中等度のBNL肝癌細胞、腫瘍血管の乏しいC26大腸癌細胞を用いて同様の実験を行うと、BNLでは中等度の抗腫瘍効果、C26では殆ど抗腫瘍効果は見られなかった。また、免疫マウスにmAb投与によりCD4+、CD8+細胞をdepleteさせると、抗腫瘍効果の抑制は抗CD4抗体を投与した時の方が強かった。さらに、免疫マウスの血中には血管内皮細胞に反応するIgG抗体が誘導されていた.以上より、iPS細胞から血管前駆細胞へ分化したiVP細胞の成分で宿主を免疫すると、腫瘍血管に反応する液性抗体が誘導され、その効果により腫瘍血管の発達が抑制され抗腫瘍効果が得られる可能性が示された。
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