海洋環境中で植物プランクトンにより生産されるクロロフィルaの物質循環における重要性を明らかにするため、下記の2点に関して研究を行った。 1.クロロフィルa派生物の包括的定量法の確立 クロロフィルaの部分的分解により生ずる派生物を包括的に定量するため、クロロフィルaおよびその派生物の標準品を用いて、分析法の検討を実施した。色素を部分的に分解するクロム酸による酸化法の検討、分解産物の抽出法、およびガスクロマトグラフによる分析条件等を検討する事により、定量性を確認できた。更に、ガスクロマトグラフ/質量分析計を用いることにより、より微量の濃度についての分析が可能となった。 2.クロロフィルa派生物のHPLCによる定性・定量法の確立 クロロフィルaおよびその派生物を個別に定量するため、高速液体クロマトグラフ(HPPLC)を用いて分析した。その結果、複数の派生物を分離・定量する事が可能となった。1により得られた結果とあわせて、クロロフィル派生物を、クロロフィルaからの変性ステップの数により、1、2、3および4ステップ以上の、4種類に分別できた。 3.クロロフィルaの分解過程の実験的解析 クロロフィルaの分解過程を追跡するため、植物プランクトンの培養および分解実験を実施した。沿岸植物プランクトン群集を含む海水試料に栄養塩を添加し、植物プランクトンを増殖させ、クロロフィルa濃度を増加させた。その後、90日にわたり培養系を暗中に放置し、クロロフィルaの分解を生じさせた。随時、試料を採取し個々のクロロフィル派生物濃度および全派生物量を測定した。
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