研究課題/領域番号 |
22651008
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
大地 まどか 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40447511)
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キーワード | 環境化学物質 / 海洋保全 / 海洋生態 / 生物影響 |
研究概要 |
環境化学物質の生物体内への蓄積特性を検証する際、その生物の生態学的特性を考慮することは、環境保全の観点から極めて重要である。しかしながら、そうした因子を考慮した系統的な報告はこれまで皆無であった。本研究は、沿岸生態系を脅かす有機スズ化合物及び新規防汚塗料に着目し、同種であるが異なる生活史をもつ海と川を行き来する通し回遊魚に着目し、回遊様式の違いに伴う有機スズの蓄積特性について、耳石の微量元素と体内有機スズ濃度を測定することにより解明することが目的である。本年度は、3つの回遊様式をもつウナギ属魚類に着目し、その回遊履歴に伴う有機スズ化合物の蓄積特性について検討した。沿岸域よりウナギを採集し、耳石の微量元素(Sr、Ca)の分析により、各個体を3つの回遊様式(海型、河口型、川型)に分類した。同時に各個体の肝臓中の有機スズ化合物の濃度を定量した。海ウナギは、川ウナギと比較して顕著に有機スズ化合物の濃度が高いことが示された。また河口ウナギの有機スズ化合物の濃度は、海ウナギと川ウナギの中間であった。よって回遊魚では、海に滞在する期間が長い個体ほど有機スズ化合物のリスクが高まることが明らかになり、同種であっても回遊様式の違いによって有機スズ化合物に対するリスクが異なることが示唆された。本成果は現在国際誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
魚類の回遊に伴う有機スズの蓄積特性の研究では、様々な魚類において、種内で有機スズに対するリスクが異なることが示唆された。また、室内実験と同時に行った野外調査により、使用が規制されている有機スズによる汚染の継続のみならず、新規防汚塗料による汚染が拡大している実態が明らかとなり、今後沿岸生態系に影響を及ぼす可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに構築した生物学的特徴を考慮した画期的な研究手法を用いて、今後は多様な魚種や、有機スズ以外の様々な環境化学物質に焦点を当てることで、回遊魚の生活史に伴う詳細な環境化学物質の蓄積特性を解明する。さらに、室内実験と併せて詳細な野外調査を行うことにより、環境化学物質による生態系攪乱機構を包括的に解明する。
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