中国西北部め乾燥・半乾燥地域では、灌漑農地の開発、農地や草地の不適切な管理などが複合して、砂漠化が進行している。これに対して、中国政府は「退耕還林還草」、「節水」、「生態移民」など、さまざまな環境政策が開始された。しかし、こうした環境政策も、実施に先だつ科学的な検証や評価が十分であったり、中央と地方の方針が異なることによってさまざまな矛盾が生じたりと、多くの問題点が存在する。本研究は中国の「節水」政策に焦点をあて、中国側研究者を含めて多角的な視点から、全国に先駆けてモデル事業として実施されているケースを対象に、その目的、手法、効果の評価、住民の生活や文化に与える影響など、その実態を明らかにし、総合的な評価方法を確立するための問題点を抽出することを目的とした。 本研究ではこれまでに研究代表者および連携研究者らが調査を行った青海省、甘粛省、内モンゴル自治区にまたがる黒河流域を主たる研究対象地とした。黒河流域では1990年代に中流域で灌概農地開発が進行した結果として、下流域の水不足、砂漠化が進行し、末端湖の消失や植生の荒廃など環境問題が顕在化した。そのため、下流域の生態環境回復のため、中流域において「節水」政策が実施され、同時に下流域では従来行われていた遊牧の禁止が行われ、一部では草地回復のため牧民を強制移住ざせるなどの生態環境政策が実施された地域である。 本年度は現地調査によって、節水政策の農民への認知度、実質的な有効性等に現地機関の協力のもとに実施して、政策の有効性を評価した。
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