現代の産業社会は、2つの環境目標実現を時間軸上に抱えている。2020年までの化学物質リスク最小化と、2050年までの二酸化炭素排出量の1990年比半減以上である。化学物質リスク評価は枠組みが構築されつつあり、二酸化炭素の排出削減のための新技術開発・導入が進行しているが、両者のトレードオフを考慮しながら、いつまでに、どこに、どれほど導入すべきか、というバックキャスティング的解析の為には技術の普及拡大に伴う排出削減ポテンシャルのきめ細かな情報が必要となる。 そこで本研究は、CO2削減と化学物質管理という2種類のリスク管理をどれほど同時に達成しうるかをトレードオフに注意し評価する方法を検討した。二酸化炭素排出抑制につながる対策技術を、ライフサイクル評価やリスク評価・管理の枠組みで統合し、供給側CO2排出抑制技術、需要側消費者の生活様式の中に潜む削減ポテンシャルを評価し、新技術の未知の評価属性にも留意しながらリスクガバナンスモデルを検討した。 評価手法開発では、物質単位を対象としたリスク評価手法とライフサイクル評価を組み合わせて、化学物質のリスク評価とCO2排出量の推定を行う方法を構築した。原単位×活動量×排出係数によるサブスタンスフロー解析に基づくマスバランス解析とインパクト評価が基本となる。 実証研究では、供給側技術として都市スタンディングマスの更新および需要側技術(排水処理・廃棄物処理技術の計画的更新)の評価を行い、複数指標間のトレードオフ態様の検討を通じて技術リスクガバナンスのプロトタイプモデルを検討した。技術リスクガバナンスプロトタイプモデルは、対策技術の適用によって得られた正味の削減効果(対策前―対策後)及び、対策効率(対策前―対策後)/対策前という2段階の指標で評価することで、削減量と対策効率の2軸で対策技術のモニタンリングを中心機能としたモデルとして提案した。
|