研究課題
DNA二重鎖切断(DSB)はDNAの両鎖の遺伝情報が失われることから最も重篤なDNA傷害のひとつである。また、ヒトでDSB修復に関わる蛋白質(Nbs1, Mre11, LigaseIV)が機能しなくなると高発がん性遺伝病となることから、DSBが染色体不安定化の引き金となると考えられる。DSBは組換え修復によって修復されるが、ヒト細胞内における組換え過程を理解する上で、障壁となっているのが、高等真核生物においてDSB修復の素過程の分子メカニズムを解析するための優れた系が存在しないことである。そこで、我々はその問題を解決するために新規のDSB導入・検出法を開発しそれを用いてヒトでの組換え修復の素過程の理解にむけた研究を行う。今年度は、「制限酵素を用いたDNA切断導入法の確立」を主たる目的として、制限酵素の細胞内への導入方法について条件検討を行った。また、人工的に導入されるDSBの分布をハイスループットDNAシーケンスによって同定するための効率の良いDSB末端の回収方法について条件検討を行った。その結果、全ての染色体由来のDSB断片を効率よく回収することに成功した。今後は回収したDSB断片の塩基配列を決定し、ゲノム上にマッピングを行うことでDSBの導入される頻度を明らかにする。また、制限酵素によって導入されたDSB末端における、既知の修復タンパク質(γH2AX、Rad51など)の会合状態について調べるために間接蛍光抗体法の条件について改良を行った。その結果、界面活性剤と固定剤で細胞を処理することでクロマチン上の修復タンパク質の検出感度を上げることができた。
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Genes Cells
巻: 15 ページ: 1036-1050
PLoS Genet.
巻: 6 ページ: e1001083