研究課題
本研究の目的は、神経幹細胞を用いた新しい放射線生体影響評価系を確立することであり、平成22年度から2つの目標を掲げている。1つは、マウス神経幹細胞での放射線応答の特徴を明らかにすることであり、昨年度、神経幹細胞を含むニューロスフェア細胞が線維芽細胞に比べて高いDNA修復能を有していることを明らかにした。2つめの目標は、放射線影響評価に使用可能な神経幹細胞の特徴を有した不死化細胞株を樹立することであり、今年度はこの目標達成を目指した。5日毎、または10日毎の長期継代培養により、マウスニューロスフェア細胞、及び対照として用いたマウス線維芽細胞が、ともに集団倍加数(PDN)が100を超え、不死化することがわかった。染色体分析の結果、線維芽細胞の染色体数は40PDNで、4倍体域を示した。これに対し、ニューロスフェア細胞では、54~75PDNで、50~60%の細胞が2倍体域に分布しており、その後100PDNを超えると約80%の細胞が4倍体に移行することが分かった。そこで、2倍体を保持した不死化ニューロスフェア細胞を7個分離し、それらの性質を調べた。その結果、分離クローン7個のうち5個(71%)は100PDNを超えても80%以上の細胞で染色体数が2倍体を保持していた。また、幹細胞マーカーであるCD133陽性細胞の割合は1.0~7.4%であり、初代細胞の1.7%と同等かそれ以上であった。さらに、1つの不死化2倍体細胞株について分化能を調べたところ、95%がグリア細胞への分化能を有していた。別の不死化2倍体細胞株について放射線感受性を調べたところ、D_0値が1.1Gyであり、初代細胞と同じ放射線感受性であった。本研究の結果は、樹立した不死化2倍体ニューロスフェア細胞の染色体が安定で、しかも神経幹細胞の特徴をよく保持しており、放射線生体影響の評価系に用いるのに有用であることを示している。
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Radiation Research
巻: 175 ページ: 416-423
10.1667/RR2391.1
http://chokai.riast.osakafu-u.ac.jp/%7Ehousya6/home.html