本研究では、バクテリア細胞をテンプレートとして利用し、内側に貴金属ナノ粒子が均一・高密度に分散した水分解中空光触媒粒子を合成することを主たる目的とする。平成22年度の研究では、中空光触媒粒子を合成する方法として、『(1)テンプレート細胞上に光触媒粒子を不均一核生成により析出させる方法』、『(2)静電相互作用を利用してバクテリア細胞と光触媒微粒子をヘテロ凝集させる方法』、『(3)原料の一部を細胞表層に選択的に吸着させ、細胞表面で析出反応を起こさせる方法』について検討を行った。まず、大腸菌表面へのシリカのコーティングで既に成功している(1)の方法により、ジルコニアのコーティングを試みたところ、細胞濃度、原料濃度、開始剤濃度等を調製することで細胞表面にジルコニアをコーティングできることを確認した。次に、光触媒として酸化亜鉛を選択し、水酸化亜鉛のコーティングを試みたが、種々の操作条件を変化させても、水酸化亜鉛はコーティングされなかった。そこで、溶媒を水からエタノールに変える、尿素により水酸化物イオンを徐々に供給する、原料溶液をゆっくり滴下するなどの方法により反応速度を抑制すると、細胞上に水酸化亜鉛がコーティングされたが十分な膜厚が得られず、焼成すると崩壊することが分かった。(2)の方法では、酸化亜鉛ナノ粒子と微生物細胞を混合することで静電相互作用による酸化亜鉛のコーティングを試みたが、先と同様に十分な膜厚は得られなかった。(3)の方法では、亜鉛イオンを含む溶液に微生物細胞を分散させ、亜鉛イオンを選択的に細胞表面に吸着させた後、水酸化亜鉛粒子の析出を試みたところ、酸性領域において吸着操作を48時間行うと、水酸化亜鉛がコーティングされていることを、自家蛍光を利用した共焦点レーザー顕微鏡観察により確認された。以上より、バイオテンプレート法による中空酸化亜鉛粒子の合成には(3)の方法が有効であることが分かった。
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