本研究では、微生物細胞をテンプレートとして利用し、内側に貴金属ナノ粒子が均一・高密度に分散した水分解中空光触媒粒子を合成することを主たる目的とする。平成23年度の研究では、光触媒としてチタニアを選択し、中空光触媒粒子の合成を試みた。チタニア粒子の合成には、アルコキシド法を用い、原料濃度、菌体濃度、触媒濃度、開始剤濃度、錯化剤濃度の操作条件を検討した結果、テンプレートして酵母を用いることで、中空チタニア粒子の合成に成功した。しかし、白金ナノ粒子が均一・高密度に分散したバクテリアをテンプレートとして用いた場合、均一核生成を抑制できる条件を見出すことができず、中空粒子に加えて中実粒子も多数生成した。そこで、化学還元により助触媒Ptを酵母表面に担持したものをテンプレートとし、内側に貴金属ナノ粒子が分散した中空光触媒粒子を合成し、硫化ナトリウムを犠牲剤として水の分解実験を行った。対照実験として、Pt担持なしの中空粒子、外側にPtを担持した中空粒子、テンプレートなしで合成した中実粒子にPtを担持したものを用いた。それぞれの粒子の光触媒能は水素生成量で評価した。その結果、中空粒子の内側にPt担持したチタニア粒子の光触媒能は、中実粒子にPtを担持したものの約4.0倍、外側にPt担持したものの約1.9倍となることが分かった。なお、Pt担持なしの中空粒子では水素が検出されなかった。以上のことより、本研究で提案する中空粒子の内側にPtを担持した光触媒粒子の有効性が実証された。これは、粒子内部で照射光が多重反射する効果、粒子のシェルに形成される空間電荷層の電位勾配の効果、Ptを内側に担持したことによる酸化サイトと還元サイトの分離効果などによるものと考えられる。
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