本年度は軟X線領域での測定技術の検討として1)1.7keV領域を利用し、最終目標であるよりやわらかいX線領域でも適用可能な検出器と、1.7keV以上のエネルギー領域で利用してきた検出器との感度、精度の比較検討をおこなった。2)軟X線領域でのGISAXS強度解析の場合に重要になるエバルト球の曲率効果について、実際のGeナノドット試料の散乱プロファイルとシミュレーションを比較する事により検討した。3)最終ターゲットとなっているより軟らかいX線領域実験に必要な高真空対応の試料ホルダおよび試験用標準試料の作成と、試料の硬X線領域でのGISAXS測定による評価をおこなった。これらの結果から、検出器に関しては従来型と比較し、今年度試験した非保護型検出器は検出感度の向上が認められる一方、応力などの外力に対する信頼性に問題があり、より軟らかいエネルギー領域への適用には精度上の検討が必要である事がわかった。一方、エバルト球曲率の問題はシミュレーションで説明できる範囲であり、エバルト球半径と試料特徴サイズとの関係にもよるが、十分補正による定量解析が可能である事が明らかになった。また、1.7keV領域でのGISAXSにおいてはX線領域においても屈折率が硬X線と比べて数倍以上の大きさとなることから、一般的には薄膜のカテゴリーに入る膜構造であっても基板まで入射X線がほとんど届かない条件を比較的容易に達成できる事が実証された。この成果は薄膜内部での内部構造の深さ依存性をソフトマターなどで非破壊測定で検討できるなど、いままで不可能であった解析を実現する可能性を開いたものと考えられる。
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