我々は、最近金の(111)面が選択的に成長した幅数nmの直線状Auナノワイヤーの合成を有機溶媒中で達成した。ナノワイヤーに関して、次のチャレンジングな課題は形態・形状などの二次構造制御である。本研究の目標は、DNAとハイブリッド化することによって、コイル状(ラセン状)のナノワイヤーの作製である。これを達成するためには、本年は(1)金ナノワイヤーを水相に移動させる方法の確立と、(2)DNAと親和性を付与するための金ナノワイヤーの表面修飾法の確立について検討した。 (1) 金ナノワイヤーの水相への相間移動 長鎖アミドアミン誘導体(C18AA)を相間移動剤に用いると、(111)面を多く持つ粒子と少ない粒子の分離ができることを見出した。そこで、同様の方法を金ナノ粒子と金ナノワイヤーの混合溶液に適用したところ、金ナノワイヤーだけを水相に移動させることに成功した。ここで重要なパラメータは、トルエン相から水相に移動させる際のpHであった。すなわち、pHが低いとAu NWsの形態は大きく変化し、一方pHが高いとAu NWsは束として存在した。最適なpH6.6付近では、Au NWsはそれぞれ分散した状態で水相に移動することがわかった。 (2) 金ナノワイヤーの表面修飾 3-メルカプトプロピオン酸(3-MPA)で金ナノワイヤーの修飾法について検討したところ、3-MPA濃度が10^<-3>Mよりも濃いと金ナノワイヤーは直線状から、屈曲した形態に変化することがわかった。10^<-4>M程度であれば、金ナノワイヤーの形態を維持したまま表面修飾が可能であった。すなわち、表面修飾において修飾分子の濃度が重要な要素であることが明らかとなった。
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