ナノワイヤーに関して、次のチャレンジングな課題は形態・形状などの二次構造制御である。これまでに、長鎖アミドアミン誘導体(C18AA)オルガノゲル中で生成した幅数nmの直線状Auナノワイヤーを水相に相間移動させる方法について検討した。ナノワイヤーを水相に移動させる理由はDNAとハイブリッド化させるためであるが、相間移動の条件が厳しく、また操作が煩雑で収率が低いことが問題であった。そこで、本年度はナノワイヤーを直接水系で作製できるかどうかについて検討した。C18AA水溶液に塩化金酸以外に硝酸銀を加えてアスコルビン酸で還元すると、直径約2 nmで数ミクロン以上の長い直線状ナノワイヤーが生成することが明らかとなった。ワイヤーの組成(金と銀の比率)については未解決であるが、塩化金酸と硝酸銀の仕込み比、アスコルビン酸やC18AAの濃度を最適化すれば、高い生成収率で得られることが明らかとなった。今度、表面修飾を行い、DANとのハイブリッド化を進める予定である。 一方、金属ナノリングやナノコイル構造が、DNAを使わなくてもC18AAの分子集合体を制御することで作製できる可能性を見出した。具体的には、少量のトルエンを加えたC18AA水溶液にK2PdCl4を溶解させた後、還元剤としてNaBH4を添加し1日静置すると、直径数百nm、太さ3nmのPdナノリングの集合体の作製に成功した。また、得られたナノリングの耐環境安定性を評価したところ、高い耐溶媒性、耐熱性、耐酸性・塩基性を有していた。Pdナノリングの生成過程についてTEM観察から検討したところ、まずスピンドル状のC18AA分子集合体の表面で粒子が生成し、その後粒子が成長してリングを形成することが明らかとなった。
|