本研究ではこれまでに、予め用意した数十nmのナノギャップに対し、電界放射電流によって誘起されるエレクトロマイグレーション(EM)現象を利用することでギャップ間にて原子移動を発生させ、ギャップ幅を狭窄化させる技術(アクティベーション法)を提案してきた。また、従来手法の電圧源を用いたアクティベーション法に代わり、電流源を用いた直接的な通電を行うことによる、より効率的かつ安定的なナノギャップの特性制御に関する検討を行ってきた。 初年度(平成22年度)では、電流源の極性を交互に変化させたアクティベーション技法を開発し、実際にナノギャップの狭窄化と作製制御の検討を行った。はじめに、電子線リソグラフィーを用いて、ギャップ幅数十nmのNiナノギャップを作製した。次にこれらの初期ナノギャップに対し、電流源を用いて、通電毎に印加電流の極性を変化させた極性変化型アクティベーションを複数回適用した。電流源の極性変化を行う事で、双方の電極から交互に原子の移動を生じさせることが可能となり、より微細なナノギャップの作製が期待できる。実際に、室温での極性変化型アクティベーション時におけるナノギャップのI-V特性より、通電電流を増加させていくにつれ、アクティベーション停止時の電圧値が連続的に減少していくことが確認できた。これは、極性変化型アクティベーションでの通電によりナノギャップが安定的に狭窄化されていることを示唆している。さらに、100μAの通電強度により移動した原子の個数は10^5個程度と見積もられた。これより、電流源の極性を通電毎に交互に変化させても連続的にナノギャップの特性制御が可能となり、極性変化型アクティベーション手法はナノギャップの抵抗制御および微細構造制御の制御性向上に寄与するものと考えられる。
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