研究課題
位相の揃ったコヒーレントなX線による回折プロファイルを解析して実空間での物質構造を得ることができるコヒーレントx線回折顕微法(CXDM)が、現在、第3世代放射光源を用いて研究されている。CXDMを用いて我々が観察できるのは、マイクロメーターオーダーサイズのバルク試料内部の微細組織の全体像であり、透過電子顕微鏡では観察が難しい構造情報である。一方、X線吸収微細構造(XAFS)法は、試料のX線吸収スペクトルから特定元素の原子周りの局所構造を評価する方法として、物質科学、化学の分野で広く普及した分析法である。本研究ではCXDMとXAFS法を組み合わせた、「ナノメートル空間分解XAFSイメージング法」を開発し、ナノ構造制御物質の構造解析に応用することが目的である。ナノメートル空間分解XAFSイメージングでは異なる入射X線エネルギーで測定された複数の回折プロファイルの解析を行うため、測定エネルギーの異なる回折強度を規格化する必要がある。この規格化のためには試料に照射されたX線光子数および試料によって散乱されたX線光子数を実測する必要がある。平成22年度は、照射X線光子数の計測のために入射X線強度を正確にモニターするシステムを構築した。X線波面を乱す散乱体を光軸上に設置することはできないため、CCDを保護するタンタル製のビームストップとSi-PINフォトダイオード素子が一体となったビームストップ兼強度モニターを作製した。このモニターの性能評価を大型放射光施設SPring-8のBL29XULにて行った。5keVに単色化したX線を高速シャッターによってX線照射時間を制御し、Si-PINフォトダイオードに流れる電流値のx線強度依存性を評価した結果、X線の光子数に換算して5桁以上の直線性があることが判明した。これは、ナノメートル空間XAFSイメージングの測定に耐えうるものであった。
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http://www.wakate.frc.eng.osaka-u.ac.jp/takahashi/