初年度は、シリカ/ポリマー/シリカの三層コア-シェル構造の中間ポリマーの除去法として、高温熱処理によるポリマー熱分解と有機溶媒によるポリマー溶出の2つの手法を使って、埋包粒子可動型の中空粒子を調製した。その結果、ポリマー溶出法により調製した球状の中空粒子において、中空部に埋め込んだ一部のシリカ球が閉ざされた空間内でも自由にブラウン運動できることを示した。 本年度は、昨年度十分に検討しなかった熱処理法による埋包粒子可動型の球状中空粒子を対象として、その中空部に埋め込まれたシリカ球の運動性を検討した。初めに、同中空粒子に交流電場を印加したところ、電場印加方向に対して平行に中空粒子が鎖状構造を形成した。しかしながら、形成された粒子が電場作用下で大きく揺らいでいたため、埋包粒子のみの運動を追跡することができなかった。そこで、増粘剤として外水相に高分子量の水溶性高分子を添加した状態で交流電場を印加したところ、一部の埋包シリカ球がブラウン運動する様子を明確に観察することができた。さらに、弱塩基溶液にあらかじめ浸漬した中空粒子を水溶性高分子溶液に分散し、同一条件の電場作用下で再度観察したところ、約75%の埋包シリカ球がブラウン運動する様子を鮮明に観察することに成功した。 以上の実験から、中空粒子に埋め込まれた内包物の動きを観察するのに、交流電場の印加と増粘剤の添加が有効であることを明らかにすることができた。
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