研究課題
六方晶窒化ホウ素(hBN)は、窒素(K)原子とホウ素(B)原子のsp2結合からなる平面原子構造の積層からなる層状化合物であり、単結晶の機械的剥離法によりグラフェン類似の原子層シートを簡単に作製することができる。昨年度に引き続き本年もナノ窒化ホウ素(BN)シートの物性探索を行った。まず、ナノBNシートの物性を議論する上で必要なバルク結晶における帰属不明の波長220nmのエキシトン発光バンドについて時間分解測定を行い、その動的振る舞いを調べた。これまで電子格子相互作用により縮退の解けた4つの自己束縛型のエキシトンと、同様なピークエネルギー間隔を持つ積層欠陥束縛型のエキシトンが明らかにされている。しかしながら、220nmのエキシトン発光は、これらの自己束縛励起子および積層欠陥励起子とは異なるスペクトル形状および時間応答性を示すことから、その起源は結晶の不完全性に由来する三重項状態が関与しているのではないかと推測される。ナノBNシートの層数の評価は、今後のナノBNシートの研究に欠くことのできない重要事項である。光学的には反射スペクトルの古典光学的な多重反射モデルにより層数の推定が可能であることがわかった。この層数の違いはラマン散乱においてもE2gモードのエネルギー位置のシフトという形で現れ、将来的にグラフェン同様の簡便な評価方法により層数を決められることを明らかにした。hBNの基板応用面では、キャリアのスピン流によるグラフェンシートの磁化や特異なホットキャリアの振る舞いの発見などグラフェン2次元電子系基礎物理の進展に寄与した。窒素原子とホウ素原子のsp2構造からなるhBN2次元平面結晶構造は原子層面上に非結合状態等を持たず、かつ絶縁体であるので、電子的な無干渉性基板としてグラフェンの電子物性を調べるのには好適な場を提供することができることを数多くの実験で検証している。
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