研究概要 |
凸多面体上で凹関数最小化を行うアルゴリズムとして単体分枝限定法は70年代から広く利用されてきたが,単体分割に緩和問題の最適解を用いるω分割規則のもとでの収束性が証明されたのは2000年以降のことである.それ以前より,生成される入れ子状の単体列がある種の非退化性を満足すればアルゴリズムは収束することが知られていたが,既存の収束証明にこの事実は使われておらず,したがって非退化性が満たされるか否かは未解決問題であった.本研究では,問題の実行可能領域を僅かに緩和することで非退化性が常に満たされることを明らかにし,その副産物として収束の保証される新たな単体分割規則ω2分割を専門誌に提案した.さらに,同様のアイディアを用いて錐分枝限定法の収束性の別証明に成功し,錐分枝限定法でもω2分割で収束が保証されるかを現在検証中である. 分枝限定法のアプリケーションにも取り組み,コンピュータビジョンの分野で扱われる分数和の最小化を効率的に行うことに成功した.既存の確定的アルゴリズでは次元が数百で分数の数が高々数十のケースしか想定されておらず,次元は高々数十にすぎないものの分数の数が数百を超えるコンピュータビジョンの問題の求解は困難であった.そこで,緩和問題の工夫と分枝操作を問題の次元の空間で行うことで,千を超える分数和の問題に対しても所与の誤差の求解が5分程度でできることを数値実験によって明らかにした.また,分数計画問題として定式化されてきたコンピュータビジョンの問題を通常の凸2次計画問題としてモデル化し直し,従来よりも格段にすぐれた計算結果を得ることもできた.
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今後の研究の推進方策 |
実質的にすべての非線形最適化問題を解決する基本目標に変化はないが,空間計算量を問題規模の多項式に抑えて理論と現実のギャップを埋めるより,計算爆発の可能性を含むアルゴリズムであっても計算途中で強制終了させるなどのヒューリスティクな利用を行う方が実用性も高く現実的と思われる.そこで,この方針に優れたアルゴリズムの開発を今後は重点的に行う予定である.
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