本研究では、ヌクレアーゼやプロテアーゼ類似の触媒機能を持つ世界最初の酵素型亜鉛フィンガー蛋白質を設計・創製し、その生物学・医学領域への展開を目指してきた。 本年度は、酵素機能を有する新しい亜鉛フィンガー蛋白質の設計・創製および活性評価に関する実験を実施する。先ず申請者らの基礎研究から、His_4型亜鉛フィンガードメインがアミノ酸エステルやリン酸エステルの加水分解を有することを見出したので、このドメインを触媒作用部位として活用することを計画した。DNA塩基配列特異的結合能を持つ天然Cys_2His_2型亜鉛フィンガー蛋白質にHis_4型亜鉛フィンガードメインを連結させた新規混合亜鉛フィンガー蛋白質を遺伝子工学的手法を駆使して作製した。この新しい亜鉛フィンガー蛋白質は、DNA結合部位とDNA切断部位とを併せ持ち、制限酵素類似の触媒作用を示した。亜鉛フィンガーは、モジュール構造と非対称なDNA認識コードという特徴を持っており、自由な長さと塩基配列のDNAを認識する制限酵素様分子の設計には最適のターゲット蛋白質と考えられる。既に申請者らは、9~15塩基対を特異的に認識できる亜鉛フィンガー蛋白質やAT塩基対に富んだ塩基配列を認識できる亜鉛フィンガー蛋白質の創製に成功しているので、これら亜鉛フィンガー蛋白質に上記His_4型触媒ドメインを結合することを試みている。
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