主たる研究対象地であるギニア共和国南部のボッソウ/ニンバ地域に関する基礎的な資料の収集・分析を継続した。ボッソウの村落林の成立の歴史を明らかにするため、22年度に設定したベルトトランゼクト法と方形区設置法の双方を組み合わせて行った森林内の樹木の分布調査のデータを継続し、経年データの収集に努めた。生育する主要樹種、とくに巨木に関して、ボッソウの住民を対象にした聞き取り調査を継続し、分析作業を行った。ギニア北西部及び南部熱帯林地域を興味深い比較対照地域として設定し、植生タイプ内のさまざまな変異を明らかにすることができた。とりわけ、アブラヤシを基幹とした人為的植生の共通点や相違点に関して多くの仮説をえることができた。両地の地方都市の市場において、アブラヤシ生産物に注目して販売価格などの調査を行い、近年の需要増加に伴い、在来の非集約的生産体系がむしろ競争力を強めている興味深い現象を明らかにすることができた。植民地期の文書調査により、ギニア共和国政府保管資料及びフランス植民地政府の行政文書について重要文献の収集を行った。とくにニンバ山に関する植民地時代の記載についていくつか興味深い文献を見つけることができ、ギニア南部熱帯林地域の森林景観の歴史的変遷についての理解を進めることができた。これらの結果を国際民族生物学会および日本霊長類学会において発表し、関係研究者からの批評を受けるとともに、複数の論文草稿として完成させた。
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