研究課題/領域番号 |
22651090
|
研究機関 | 神戸女子大学 |
研究代表者 |
園田 節子 神戸女子大学, 文学部, 准教授 (60367133)
|
キーワード | 史料論 / 華僑 / 華人 / ひとの移動 / 北アメリカ / 地域性 |
研究概要 |
当該年度はサンフランシスコとポートランド、そしてロサンジェルスの華僑関連史料に関して、日本でまず基礎的調査をおこない、夏期にアメリカ西海岸で集中的に現地調査を実施した。ポートランドでは、オレゴン歴史協会で所蔵資料を調査し、僑団史料のほか市の開発計画書、写真資料や学位論文など関連資料の内容や分量、年代などから、当該地における中国移民社会の実態と関連研究の進展について理解し、また同時に、ポートランドはハブ地よりも、むしろサンフランシスコから移動してきた中国移民の止住地に該当することを明らかにした。引き続き関連論文をポートランド市立大学で調査し、また華僑コミュニティに残る史料についてはポートランド中華会館で歴史部の代表者たちと面談して収集した。会館関係者へのインタヴューとその協力を得て、同会館が現地華僑史書籍の編集、博物館の設置、中国人墓地保存運動の主導を担うなど、内部の歴史保存に取り組む動きを調査し、資料を収集した。サンフランシスコでは、カリフォルニア大学バークレー校で所蔵資料の調査をおこない、解題や文献リストなど過去におこなわれた史料編纂の作業やその編者情報について整頓し、1970年代から中国系アメリカ人歴史家個人や団体が華僑史料の収集保存をおこなったことを明らかにした。またコミュニティの啓発につながる歴史保存活動をおこなう美国華人歴史協会を訪問し、中国移民史を中国系住民にどう表象しているか、展示や資料から分析した。これまでの調査分析に対して中間評価を得るために、調査結果をまとめ、11月のアメリカ文化人類学会で英語発表し、会場の質疑応答の中で今後につながる議論の深化に務めた。またカナダやアメリカ西海岸で確認できた墓地保存などの歴史運動は、『中国年鑑2012』で2011年度における世界の華僑華人社会の動向報告の一部に活かすなど情報を整理して、専門出版物に徐々に活字発表していく体制に入った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サンフランシスコから南下する中国移民を集中調査する予定であったが、ロサンジェルスは現地華僑団体との連絡がつかず、調査地をポートランドとサンフランシスコのみに絞ることになった。さらに日本からの連絡段階で日本で得られたポートランド中華会館の連絡先はすべて失効していたため、現地で直接交渉せざるを得なかったり、建物の老朽化による漏水で博物館を見学できない事情が現地で初めて伝えられたりなど、不測の事態への対処を迫られた。ただし最終的に現地華僑の協力と信頼を得られたため良質の資料を収集でき、この成果でサンフランシスコからの移動を捉えるにあたり、ロサンジェルスの情報不足を補完しつつ研究を進行できた。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画通りにアメリカ東海岸とトニダードの調査を遂行する。また、新しい試みの研究であるため、これまで通り研究者や関係者から常に意見や批判を得ながら方向性を探る。初年度は、現地調査の時に意見やコメントを得たり、日本国内の研究会で構想発表や中間報告発表をして、寄せられるコメントを参考にしたりしていたが、当該年度は初めて、海外の国際学会における発表でアメリカ・カナダの研究者から意見コメントを得て大きな刺激になった。よって今後も機会を得て海外発表し、その場で本プロジェクトへの意見コメントを集めて、内容や分析を深化させる計画である。
|