研究課題/領域番号 |
22652008
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
林 晋 京都大学, 文学研究科, 教授 (40156443)
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研究分担者 |
藤田 正勝 京都大学, 文学研究科, 教授 (90165390)
出口 康夫 京都大学, 文学研究科, 准教授 (20314073)
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キーワード | 京都学派の哲学 / WEBアーカイブ / テキスト生成研究 |
研究概要 |
申請時の計画では西田哲学にはおいては善の研究、田辺哲学においては種の論理の生成過程を、手書き史料をもとに明らかにする計画であったが、善の研究成立時の史料を得ることが困難であったため、種の論理成立の直前から始まる所謂「西田田辺論争」の時代を中心とした研究に切り替えた。この時代の西田資料としては京大文学研究科図書室に西田哲学論文集の原稿20ファイルの中に該当するものが多くある。 このような経緯から、今年度は京大文学研究科図書館の西田史料のすべて(手紙類を除く)を高精度カラー電子画像化した。また、群馬大の田辺史料のうち、種の論理と特に関連があるものの一部を電子化した。そして、これらをWEBアーカイブとして公開する仕組みをほぼ完成させ、現在、コンテンツの準備を行なっている。これはwww.kyoto-gakuha.infoというURLのサイトで2011年度夏までには公開する予定である。画像としての文書を類似パターンで検索するための画像処理も同時に進んでいる。 田辺の種の論理の成立研究が、林、藤田により進み、次のような知見が得られた。昭和9年の種の論理誕生の年の特殊講義メモの翻刻・分析により、現象学研究者で、知識社会学の提唱者であるMax Schelerの影響がわかってきた。田辺はScheler, N.HartmannなどをAlois Riehlに代表される批判実在論の系譜に位置づけている。Riehl哲学は田辺の処女論文における中心テーマでもあり、最近の思想史研究により、現代の大陸哲学、英米哲学への二分状態の岐路としての新カント派に於いて、特にその英米系哲学の流れへの影響を指摘されている人である。田辺哲学がこの分岐と拘わっているだけに注目される。Schelerの哲学的人間学は著名であり、最近の竹花による種の論理成立への心身問題の影響の指摘を考えれば、従来知られていたマルクス主義への対峙の外に、特に、ハイデガー哲学、西田哲学への対峙として、この社会学的人間学の影響が重要であることがわかりつつある。
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