技法書に関しては、江戸時代の文献をおよそ70篇、明治から昭和戦前期をおよそ80篇、戦後をおよそ40篇の収集を古書店からの購入や近代デジタルライブラリー及び芸大貴重書データベースからのダウンロードによって収集した。収集した文献はまず、序文と目次部分だけを抜き出し、各時代にどのような内容がどのような優先順位で扱われてきたかを整理した。それにより、技法書において「六法」「用筆」「写意」といった日本画の理念を説くものから、画材の解説といった材料偏重のものへと変化していった過程の全体像を把握することができた。次年度以降は、さらにそれらの内容に踏み込んでいく。 摸本については、東京芸術大学大学美術館に所蔵されている5000点余の手本及び摸本の整理作業を行った。これにより、ほぼすべての作品に整理番号をつけ終えることができた。また、美術学校時代の摸写教育に使用されていた手本やその学生作品、及びその摸写手法がどのようなものであったかを把握することができた。今後これらの手本や摸本の整理作業を進めるとともに、修理時などに取り外されてしまう表具に記載されている情報の収集・整理を行う。
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