研究課題/領域番号 |
22652012
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
蜷川 順子 関西大学, 文学部, 教授 (00268468)
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研究分担者 |
並木 誠士 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (50211446)
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キーワード | 幼児イエス像 / 東西交流 / マゼラン / サント・ニーニョ / 改宗 / フランドルの彫像 / 大航海時代 / 子供神 |
研究概要 |
研究の具体的内容:平成22年度は、セブのサント・ニーニョ(聖なる幼児イエス)像の物性調査を中心にすすめた。11月にフィリピンを訪問する際には研究協力者であるフィリピン大学のレスピシオ先生の仲介で可視光線や赤外線による写真撮影の許可が得られていたはずだったが、実際にはガラス越しのものしか認められず、また、1月のサント・ニーニョ祭における衣装替に際して、像の剥落した断片を採取し分析する予定だったが、これも最終的な許可が下りなかった。現在信仰を集めている対象像の、海外における調査の難しさを痛感するが、23年度には、現地のさらなる協力者を得ることができるよう連絡を続けている。物性調査以外の面では、子供神一般の広がりを調査するため、7月の国際美学会に際して北京において調査をおこなった。また、2010年11月17日にセブ市で行われた第1回国際ビサイヤ芸術文化学会(ICOVAC)では、「十字路に立つ幼児イエス」のタイトルで発表を行い、本研究における物性調査の重要性を訴え、参加者の間では理解が得られた。 研究の意義:本研究における文献調査はかなり進んだが、文献を調べても、これまで物性調査がまったく行われていない状況にあることがわかる。したがって、一連のアプローチを通して文化財における物性調査の重要性を訴え、研究者の間で理解者が増えてきたことは、今後の研究を展開する上での基礎作りとしての意義を有する。 研究の重要性:物性調査に関しては、使用されている木材の種類、表面の塗布の種類、回数、技法などの知見が得られれば、プラハのイエス像など関連する他の彫像との具体的な比較ができる点で重要である。また、物性調査が実現しない場合には、その理由を調査することで、像をめぐる特殊な信仰空間の問題を考察することができ、その意味で重要である。
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