研究課題/領域番号 |
22652012
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
蜷川 順子 関西大学, 文学部, 教授 (00268468)
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研究分担者 |
並木 誠士 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (50211446)
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キーワード | 子供神 / セブのサント・ニーニョ / マゼラン / 幼児イエス像 / 東西交流 / ヨーロッパの南北交流 / メッヘレン / 輸出用彫像 |
研究概要 |
フィリピンのセブで信仰を集めているサント・ニーニョ(聖なる幼児イエス)像は、フランドル産でありながら、マゼランを初めとするスペインで受容されていたという、ヨーロッパ南北の文化交流の問題、その彫像がアジアで新しい信仰を生んだという、東西の文化交流の問題の結節点に位置づけられる。本研究は、マゼランの一行がこの彫像をもっていた理由や、この彫像が改宗に際して果たした働きなどを問うことで、近代におけるセブのサント・ニーニョ像の意味を探ることを目的とした。 今年度は、マゼランの一行がこの彫像をもっていた理由を考察するために、ネーデルラント大公オーストリアのマルガレータのメッヘレンの宮廷とスペイン宮廷との関係を示す資料収集を、ベルギーにおいて実施した。フィリピンにおける再調査は、同国で協力してくれる研究者の都合により延期することになった。その代わりに、当時フィリピンが属していたメキシコ副王領の資料収集、および、環太平洋地域の神話を収集するために、メキシコ・シティおよびハワイでの調査を実施した。この過程で、同彫像が改宗に際して果たした役割に、フィリピン固有の神話世界との関係があることが明らかになった。また、子供神は環太平洋地域のみならず、わが国にも分布することも明らかになった。 また今年度は、ヨーロッパ、とくにベルギーにおける調査、資料収集を実施し、研究成果公表の一環として、昨年度おこなった調査結果と併せて、論文『子供神考へ向けて』を発表した。ここでは、ヨーロッパとアジアの交流史のみならず、ヨーロッパ内部における幼児像変遷の研究成果を加えることで、近世における幼児イエス像展開過程へのセブのサント・ニーニョ像の位置づけを試みた。東西の文化交流におけるキリスト教美術は聖母像を中心に論じられることが多いので、本研究はそこに新たな視座を提供した点で重要である。
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