本研究は、明治大正期日本において、西欧美術に関する同時代的情報が、どのようにもたらされたのかを初めて明らかにしようとするものである。第一に、媒介する雑誌の種類と性質、第二に美術情報を収集し執筆する人物、第三に、その情報がもたらした同時代美術への影響や衝撃について、詳細に明らかにすることを目的としている。 本年度は、『東京美術学校校友会月報』『美術新報』『美術週報』における美術彙報記事の全てを抜き出し、その後の研究が円滑に行えるように、分類整理、見出しの付加、索引整理などをまず行った。 その上で、とりわけこうした美術情報の収集と発信に貢献した、美術批評家岩村透の執筆活動に関する調査を進め、同時代の作家森鴎外の『椋鳥通信』などの情報収集と、いかなる点で、相違があるのかの考察も進めている。 本研究は終了時に、明治大正期美術批評史の大きな枠組みとあわせて記述する単行本(全体枚数を原稿用紙換算1700枚)で刊行することを予定している。すでに出版社企画としても承認されて、現在全体予定枚数の約二分の一(750枚程度)の執筆を終えており、本課題研究終了予定の来年度までには脱稿をめざしている。なおかつ、本研究に関わる資料所蔵者との関係もあって、本研究に関しては、単行本で成果を一挙に公開することをめざしているため、すでに執筆原稿はかなりの量に達しているが、あえて今年度は論文および口頭発表を控えていることを申し添える。
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