研究概要 |
人が心理的なストレスにさらされたときに音楽を聴取することが,(a)心理的(すなわち主観的)ストレス度、および(b)生理的(客観的)なストレス度に対してどのような影響を及ぼすか、またその時間的変化について定量的に測定する2つの実験を行った。 実験1では大学生20名を、実験2では同15名を被験者とし、人前でのスピーチと困難な計算課題を与えるTSST法を用いて、被験者のストレスを高めた後、音楽を聴取させる音楽条件または音楽聴取なしで安静にさせる統制条件下においた。心理的ストレス度(J-SACLによる)および生理的ストレス度(唾液中のストレスホルモン、コルチゾールの濃度)をストレス負荷前から負荷後約30分間について、実験1で7回、実験2で5回にわたり、時系列的に測定した。 測定結果について、音楽聴取条件と統制条件を比較検討したところ、実験1では、ストレス負荷後の心理的ストレス度が音楽条件において統制条件よりも速やかに解消されることが示された。また実験2では、そのような効果は音楽の種類によって異なり、高揚的な音楽が鎮静的な音楽よりも効果的に心理的ストレスを解消することがわかった。 一方、生理的ストレス指標(唾液中コルチゾール濃度)について分析したところ、特に音楽条件で統制条件よりも早くストレスが解消するという結果にはならず、心理指標と生理学的指標の問には、ある種のズレがみられた。
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