古管尺八の実地調査(22年10月26日)においては大阪音楽大学の志村哲教授の協力を得て、江戸期から明治期にかけての代表的な尺八を選定することができた。また、これらの尺人に共通する構造的な特徴及び尺八間での差異についての知見を得た。 研究発表(紀要)「正倉院尺八調新義」では、正倉院尺八の寸法のままに製作した笛を機械吹奏して振動数を計測し、その音楽的意味を考察した。その結果、唐代の燕楽二十八調の音階を吹奏するに最も便なるように指孔が並んでいるとの新しい知見を得た。 正倉院尺八の実測図に基づいてレプリカを製作し、その音響特性を測定した。さらに実測図より計算モデルを作成し、あらゆる運指における共鳴周波数を計算できるようにした。その研究成果は音楽音響研究会において発表した。この計算モデルにおける考え方は正倉院尺人のみならず、ほとんど全ての尺八に応用できる点において極めて重要な成果である。また、フルートと尺八との比較という観点から音楽と楽器の相互作用および楽器の科学的設計について招待講演(音響学会秋季および春季研究発表会)を行い、尺八の歴史的変遷および設計・製作思想の独自性などに言及した。
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