研究課題/領域番号 |
22652025
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
吉田 司雄 工学院大学, 基礎・教養教育部門, 教授 (50296779)
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キーワード | 日本文学 / 探偵小説 / 科学言説 / 大衆文化 / メディア / アジア / 忍者 / 国際情報交換 |
研究概要 |
本研究の目的は科学言説と文学言説を中心とする他の言説群との相互関連性を問題とし、文学研究の内側に止まることなく新たな文化研究の可能性を模索し、また国内外の研究者と協力体制を構築して、これまでの一国主義・一言語主義的な文学研究・文化史研究の枠におさまらない研究領野を開拓することであるが、その具体的な展開をはかるべく、アジア圏における多言語的な受容形態を踏まえた欧米探偵小説移入史の再構築と日本およびアジアにおける創作探偵小説形成期の再検討を継続した。その成果の一端は、2012年4月に韓国ソウル市の高麗大学で開催される東アジア文化交渉学会でのパネルセッション「推理小説〓 政治文化」および2012年11月に台湾新北市の輔仁大学で開催される国際シンポジウムで発表予定であるが、植民地主義と深く結びつく形で展開した戦前日本の探偵小説が一方では経済恐慌による予測不可能な暴発を契機としている点など、従来とは異なる視角から探偵小説ジャンルの生成要因を考究している。 また、大衆文化のトランスナショナルな移動の様態を探るために、昨年来「忍者文化研究会」をもっているが、昭和30年代以降の高度成長期の忍者ブームを牽引した五味康祐、司馬遼太郎、柴田錬三郎、村山知義、山田風太郎らの小説作品を解読し、その社会的文化的背景を調査することで、日本固有にみえる忍者物というジャンルが実はアジア的な想像力を基層として持ち、多層的な文化的交差の可能性を秘めていることが明らかとなってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
個別テーマの深化や研究協力体制の構築はおおむね順調であるが、資料のデータベース化作業や研究成果取りまとめのための準備はやや遅れ気味である。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度にあたり、これまでの成果を点検し、場合によってはデータ処理の範囲を絞るなどしながら、できるだけ早い時期での研究成果公表(例えば論文集の公刊など)を目指す。
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