本研究の目的は、国内外の図書館および美術館・博物館に収蔵される中国の碑帖拓本について、書誌テータの線準化を図り、拓本資料を広く活用するための基盤を整備することにある。研究代表者・菅野智明は、まず国内の拓本所蔵機関が独自に編んだ拓本目録16件を収集のうえ、それらの書誌的記述項目の整理を通して、拓本目録の標準化をめぐる基本問題の洗い出しから着手した。加えて台北故宮博物院・書画処における拓本の整理状況について実地に調査し、同院書画処長・何伝馨氏より、拓本の目録化について御教示を賜った。これらの予備的調査を踏まえ、中国で制定された拓本独自の標準目録規則「中文拓片編目規則」に着目し、この先進的事例が、わが国において如何に導入可能か、上記の諸機関拓本目録に加え、「日本目録規則」等との比較から検討を加えた。一方、研究分担者・増田知之は、まず各機関における法帖の所蔵状況の調査を行った。法帖は美術品として博物館や美術館に収蔵される一方で、「漢籍」として図書館・文庫等の諸機関に収蔵されるケースが多い。そこで、各大学図書館・文庫等の漢籍目録ならびに京都大学人文科学研究所HP上にある「全国漢籍データベース」を利用し、各法帖について帖名(および登録名)、巻・冊数、所蔵機関名、請求記号、周辺情報(帖の内容・撰者・刻者・刊行年など)等のデータをまとめ、国内における横断的データベースの構築に取りかかった。次年度はデータの更なる増加を目指す。また、法帖のデータ化を進めるにあたり最大の問題となるのは、翻刻本や偽刻本の扱いである。そこで、今年度は実地調査として国立国会図書館所蔵の二種の『絳帖』の調査を行った(いずれもマイクロフィルム)。その結果、国会図書館所蔵本は、宇野雪村『法帖事典』等に『偽絳帖』として著録される偽刻本であることが判明した。本調査に関しては次年度に然るべき形で公表する予定である。
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