研究課題/領域番号 |
22652033
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
菅野 智明 筑波大学, 芸術系, 准教授 (90272088)
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研究分担者 |
増田 知之 京都大学, 文学研究科, 非常勤講師 (60559649)
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キーワード | 芸術諸学 / 中国文学 / 美術史 / 中国史 |
研究概要 |
本研究の目的は、国内外の図書館および美術館・博物館に収蔵される中国の碑帖拓本について、書誌データの標準化、目録化を図り、拓本資料を広く活用するための基盤を整備することにある。研究代表者・菅野は、各機関の所蔵拓本およびその目録化状況の調査を前年度から継続し、今年度は中央美術学院図書館を訪ねた。その成果を踏まえ、継続課題であった「中文拓片編目規則」の日本における導入可能性という問題について、その方向性を論文として公表するとともに、次なる課題として、「日本目録規則」に準じた形での拓本タイトルのあり方を設定し、現在検討を継続している。研究分担者・増田知之は、前年度に引き続いて日本の諸機関に所蔵される法帖のデータベース化を目指し、国内の収蔵状況の調査を行った。前年度より継続中のデータの増強をはかるとともに、今年度はデータ標準化作業の進捗を妨げる翻刻本・偽刻本の問題について、『絳帖』の偽刻本である『偽絳帖』全12巻を取り上げて重点的に検討を加えた。まず、現在の収蔵状況を確認すべく、調査済みの国立国会図書館のほか、東洋文庫・大阪大学・立命館大学の所蔵本について実見調査を行った。また一方で、歴代の文献史料を整理し『偽絳帖』についての事実の確定を試みた。その概要を述べれば、(1)日本の諸機関において『絳帖』12巻として所蔵される法帖はほぼ例外なく『偽絳帖』である。(2)『偽絳帖』という呼称は清代中期の翁方綱によるもので、彼の残した記述が後の諸議論の中核をなした。(3)『偽絳帖』の成立時期は清代康煕年間(1662-1722)前半と推断し得る。本成果はすでに論文としてまとめ現在印刷中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各機関所蔵の碑帖拓本の調査、およびデータの収集が計画どおり遂行でき、成果の一端が公表できたため。
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今後の研究の推進方策 |
各機関所蔵拓本の調査を継続し、データの収集に努める。拓本書誌の標準化案については、これまでの総論的な検討を踏まえ、各論的な検討に重点を置き、多角的に進める。また法帖についても、各機関の調査を継続しデータの増強を試みる。更に、種々の偽刻本の比較検討を通じて、偽刻本刊行の実態に迫るとともにその流通状況の解明にも努めたい。
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