本研究課題の目的は、人間の言語活動上の機能である言語情報の補完がどのように行われているのかを明らかにすることである。 22年度は、情報補完処理のために必須であると考えられる予測処理について検証を行った。これは情報補完処理過程をモデル化する上で重要であるゆえに意義がある。検証方法としてはfMRI実験を行った。課題としては、未完成の文を文節ごとに提示し、最後にどのような動詞が現れるかを予測してもらうという課題であった。結果については現在解析中であるが、傾向としては側頭葉に有意な賦活がみられると予測される。 次に、本処理が個別言語に依るものであるか、言語差に関係ないユニバーサルなものであるかを検証するため、また、情報の処理後の経過時間の影響を探るために、フランス語母語話者を対象に心理行動実験を行った。課題としては、7段階のレーティングによる文法性判断課題であり、容認度、文節ごとの読み時間を計測した。刺激には、文法的には同様に間違っているが、語順のみ異なっている文を用いた。これは予測、補完をする上での時間的・短期記憶的側面の影響を探るためである。 本実験はすでに日本語と英語において検証ずみであったが、実験の結果、日英両言語と同様に、フランス語においても予測処理が存在することを示唆された。本結果はESCOP(The European Society for Cognitive Psychology)において発表する予定である。
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