研究概要 |
本研究の目的は、我々が日常的に行なっている言語理解に関して、文として入力される言語情報がまだ聞き手にとって未入力である場合、どのようにその未入力の情報を補うのかを心理指標のみならず脳機能の側面からも解明することである。 未入力の情報を補完する場合、前提となる認知プロセスは「予測処理」と考えられる。予測処理では、まだ発話者が発話をしていない段階で次の情報を推測し、それを記憶に保持する処理であり、これまで心理言語学、もしくは認知心理学の分野で研究が行われてきたテーマである(Kamide,2009レビューなど)。一方、補完処理は実際には表象としては現れなかった情報を推論し、それを記憶に保持しておく処理だと考えられる。このことから、補完処理は予測処理と関連性がある可能性が示唆されるが、予測処理に関する神経基盤、特に、言語情報の予測に関わる神経基盤についての研究はまだ稀である。 そこで本年度は予測処理に焦点をあて、fMRI実験を行なった。データについては規在解析中であるが、傾向としては運動(モーター)に関する予測、言語の予測、数列など規則性に基づく予測ではそれぞれ異なる神経基盤が関与している可能性が示唆される。一方で情報の種類に関係なく共通した賦活も見られる傾向があることから、今後、予測処理と補完処理の共通性、個別性について追究されることが期待される。
|