日本手話やアメリカ手話において、視線は文法の一部である。その視線は何かを見るための視線や意識的・無意識的表情としての視線とは違い、発話の意味を一義的に決定するのである。本研究では (1) 言語学の研究で得た知見と(2)インド舞踊パラタナティアムの手話に酷似した視線の分析と(3)視線計測と(4)視線以外を駆使して、脳科学的には分析が極めて困難な複数機能が混在する視線の表出を、言語性を基準に分析した。手話者の複数の視線を分類し、パラタナティアムの視線を分析した。そして視線の言語記号化までの段階的メカニズムを解明し、視線の言語化は人間の言語能力のひとつであることを証明した。 (1)ネイティブサイナーと長じて手話を習ったノンネイティブ・サイナー(複数)の視線を比較し(2)ノンネイティブ・サイナーのエラーとその話者が手話を習得した年齢との関係を調べ、(3)言語的視線の習得を音声言語の音声学的・音韻論的・統語論的レベルの習得やイントネーションの習得に照らして考察した。 録画した手話者・踊り手の視線を再生した画面上で、その軌跡を追う方法を編み出し、同時にアイトラッカーにより、測定したデータと合わせて分析した。特に日本手話の表現中の視線の測定は、視線の文法を解明することに役立った。その表出はネイティブサイナーとノンネイティブサイナーで相違が明らかであった。
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