意味推測に関わる漢字熟語の特性である「漢字熟語を構成する漢字と単語全体の意味の結びつき(意味の透明性)」を数値化するため,日本人大学生を対象に調査を実施した。 調査材料は,漢字2字で構成される漢字熟語(以下,漢字語)を以下のような手続きで選択した。まず,(1)から(3)のデータを統合し,323語を選定した。(1)非漢字系中上級日本語学習による漢字語の意味の推測過程調査で収集された,意味を推測するのが難しい漢字語(108語) (2)国語学の漢字語の語構成に関する研究結果から,語構成が明確である漢字語(20語) (3) 非漢字系日本語学習による漢字語の意味の推測過程調査で使用した漢字語(300語)。この323語に加えて,国立国語研究所「現代雑誌200万字言語調査語彙表」から177語を選択し,合計500語を調査材料とした。500語の漢字語それぞれに対して,「漢字語を構成する漢字どうしの組み合わせと漢字語の意味とを,どの程度結びつけることができるか」について5段階で評定をするための尺度を記載した調査表を作成した。調査表は,500語の漢字語を五十音順に昇順に並べたものと降順に並べたものを2種類作成した。 調査対象者に1部ずつ調査表を配布し,各自のペースで回答してもらった。意味の透明性の評定は,1(まったく結びつかない)から5(非常に結びつきやすい)までの中で,もっともあはまるものを選んでもらった。漢字ごとに調査対象者の平均評定値を算出し,それを「漢字語の意味の透明度」とした。 調査の結果と,非漢字系日本語学習者にとって意味の推測が困難な漢字語とを合わせて分析すると,意味の透明性の高いことと,学習者が正しく意味の推測ができるかどうかは結びつかないことが明らかとなった。
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