前年度に引き続き、教養科目<地域の世界史>において「中東の歴史と文化」を開講した。最初の授業時間に、受講者の予備知識を確認するため、中東の地理、および歴史、文化に関するキーワードについて、クイズ形式の小テストを行った。また、この授業で触れてほしい事項等についてもアンケートを行った。小テスト、アンケートの結果を参考にしつつ、ユダヤ、アラブ、イスラームの歴史、文化について、高等学校の世界史、現代社会、倫理の教科書内容を更に深める形で講義を行った。教材には、その都度集めておいたニュースや特別番組の録画、新聞記事を多用した。授業の終わりには毎回、小レポートを提出させ、講義の進め方の参考とした。また、最後の時間には、理解度を確認するために、アンケートを兼ねた小テストを行った。 受講者の主たる関心は、昨今の世界情勢から報道量の多いイスラームやパレスチナ紛争にあった。単なる過去の歴史だけではなく、現代との関わりを重視することで受講者の関心を高めるということにおいて意義があった。また、日本とイスラームとの相互関係という視点から、イスラーム諸国からの本学留学生の生活や、九州のイスラーム諸国向けハラール食品産業などを紹介しながら、イスラームが決して我々日本人から遠い存在ではなく、共生を模索しなければならない時代になってきていることにも触れた。そのためにはイスラームについての正しい理解が必要であることを強調した。 この講義は異文化理解も視野に入れている。歴史や文化についての知識を得るだけではなく、実際にその地域で使われている言語に触れてみることは異文化理解のための大きな要素となると考え、アラビア文字の習得を評価の一部として義務付けた。異質な文字を実際に学ばせることにより、中東を異文化として実感させることに大きな意義があった。 なお、本授業の実践記録は学内の紀要に発表される予定である。
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