研究概要 |
23年度の研究から次のような知見が得られた。 (1)空間的思考の構成要素の体系化 空間的思考とGISの構成要素との関連性について,東京で開催された国際会議STGIS2011で発表し,海外の研究者と討論した.その結果をふまえて,空間的思考と空間的能力との関連性を明らかにするために,空間能力テスト,空間思考課題,大規模空間の把握に関する方向定位課題,および空間的思考と方向感覚に関する質問紙調査を実施した.得られたデータは分析中で,その結果をもとに次年度には検証実験を行う予定である. (2)学校教育課程における空間的推論の認知過程 大学入試センター試験における過去の地形図読図問題の内容を分析し,学習指導要領の改訂に伴う出題傾向の変化を分析した.その結果,従来は地図記号や地形的特徴の読み取りが主体だったが,最近は新旧地形図の比較や地図に直接描かれていない事柄を推理するような,高次の思考力を試す設問が増加していることがわかった.また,22年度に引き続き,大学入試センター試験の問題から地形図読図問題を選定し,大学生を対象にプロトコル分析などを用いて解答過程を分析したところ,出題内容によって解答過程が異なることがわかった. (3)空間的思考の育成のためのGISの活用 GISの専門研究者にアンケート調査を実施し,GISの構成要素が空間的思考と関連していることはわかったが,空間的思考の教育にGISがどの程度効果的かは明確にはできなかった.この点については,今後の課題としたい.
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