研究概要 |
初年度は、以下の三つの課題、1.文献研究・写真作品(オリジナルプリント)鑑賞調査、2.人類学分野主要な写真史の記述、3.実践を含むデジタル映像の人類学調査への可能性の解明、について取り組んだ。その成果は以下の通り。 1.基本的な映像人類学・写真史に関連する文献及び写真集の収集を行った。また東京都写真美術館など写真作品収蔵研究教育機関を訪問し、写真作品鑑賞調査を実施した。これらを通して、映像人類学及びデジタルメディア技術についての技術・理論一般に関する基礎的知識を得ると共に、写真史の記述についての方法論を一定程度身につけた。 2.主要な人類学の写真史の試みは、古典的民族誌の間で写真の使い方について差異があり、当初想定しているように一律に分析・記述することは困難であった。その原因の一つは、申請者がそもそも写真史の記述方法を十分理解していなかったことに由来する。それ故に1,での文献・作品研究を踏まえて、最初の探査的取り組みとして、戦後日本の代表的民族誌における写真を取り上げ、これを分析するという試みを行った。これらの作業を通して、人類学写真史を記述するための資料選別方法及び実際の分析がどのように行い得るのかについての見通しも得た。 3.2011年2月17-18日に東北大学において、研究協力者の齋藤秀一氏(写真家・映像作家)と共に「フィールドワーカーのためのデジタル映像ワークショップ(ビデオ編)」を開催した。この準備及び企画での演習・討論を通して、文献研究を通して組み写真の手法と動画記録の構成方法は基本的に同じ構造にあること、また動画記録方法にある「ショット」や「シーン」等の概念と、記述という手法の相違点と共通点を理解することが出来た。今年度は映像と人類学調査の関係に関わる方法と理論について上記のような一定の知見を得たが、デジタルの特質をふまえた考察は出来なかったのが反省点である。
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