研究概要 |
経験的手法を通じて法的・規範的実践の構造を行為場面の論理性に照らして解明するため、混雑する通行場面(学園祭、繁華街、観光的行事)におけるビデオ撮影を実施し、その一部を選択して、分析をおこなった.その主な知見はつぎの通り-(1)通行/歩行の秩序ある性質の基本的なパラメータは速度と方向であること、(2)その秩序ある性質の認識は言語による交流を前提としないこと.そこで通行/歩行現象の厳密な分析可能性(再現可能性と了解可能性)は、つぎの性質に着目することで基礎づけられると結論する.(1)繰り返しそれを見ることができること、(2)つねに連続して、一目で理解できること、(3)通行/歩行にとって個々の行為目的は相対的に無関連であること、(4)通行/歩行にとってその環境への適合性が重要であること、(5)通行/歩行の構造は「見えているが注目されていない」こと、(6)通行/歩行は形式言語以前の世界におけるコミュニケーションであること.また、先行研究(E.Goffman, H.Sacks, D.Sudnowら)の方法と成果を検討し、つぎの結論を得た.(1)「衝突の回避」(Goffman)を中心とする説明とエスのメソドロジカルな説明とは非対称的関係にあること、(2)後者においては、通行/歩行行為の方法的性格が解明されている点で本研究の知見と整合的であること、(3)本研究においては、通行/歩行の方法的性格を、「身体間距離の連続的調整」と名付けうる実践を中心にして、より体系的に研究できること.今後、以上の知見等の上にたち、非介入的手法によるデータ収集技法の発展を図る.また、紛争経験のインタビュー記録(法律相談と調査インタビュー)については、犯罪被害者のディスコースを収集したので、分析を準備している.
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