研究課題
初年度であり、基礎資料の収集と端緒的理論活動に重点を置く予定であったが、2010年9月の日仏物権法セミナー(パリ)において報告の機会を得ることができ、予定よりも早いスピードで研究活動が展開することになった。同セミナーで私が担当した報告テーマは、La diversification des biens etla relation d'appartenance(財の多様化と帰属関係)であり、本萌芽研究のテーマに即したものであったからである。同セミナーにおいて報告を担当する日本人研究者(金山直樹、片山直也、森田宏樹、平野裕之等)間で研究会が組織され、数回にわたって集中的な議論の機会が持たれた(慶應義塾大学にて)。それは、本萌芽研究の研究活動に直接的に連なるものであった。そこでの議論を踏まえて報告を準備する中で、現代における財の多様化とその帰属関係の多様化を確認することができた。理論的には、従来の財概念では把握することが難しい新たな「財」(広義)が登場していること(典型的には人体派生物)、それは、人格と密接に関連するものであることが重要である。問題は、それをも「財」と把握すべきか、把握するとしてどのような概念をそれに充てればよいのか、である。仮説的に「人格的財」という概念を想定してみたが、なお検討が必要である。他方で、今年度の課題として予定した水津准教授(慶應義塾大学)との理論交流も開始することができた。具体的には、2010年11月に北海道大学において研究会を開催し、水津太郎「財産論の構造-パンデクテン体系との関係をめぐって」という報告を得て議論することができたのである。以上のように、本萌芽研究の研究活動は予定以上に順調に展開している。来年度は、上記の報告をフランスの出版社(Dalloz)から出版するほか、今度は東京で開催される日仏物権法セミナーにおいて総括を担当する予定である。これらを軸に、研究活動をさらに推進したい。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (9件) 図書 (2件)
法律時報
巻: 88巻3号 ページ: 86-91
ジェンダーと法
巻: 7号 ページ: 4-16
Travaux de l'Association Henri Capitaint, La concurrence
ページ: 401-413
舟田正之・金井貴嗣・泉水文雄【編】『経済法判例・審決百選(別冊ジュリスト)』(有斐閣)
巻: 199号 ページ: 236-237
廣瀬久和・河上正二【編】『消費者法判例百選(別冊ジュリスト)』(有斐閣)
巻: 200号 ページ: 246-247
判例時報
巻: 2075号 ページ: 179-183
巻: 82巻10号 ページ: 6-14
床谷文雄・犬伏由子【編】『現代相続法』(有斐閣)
ページ: 62-116
中田裕康【編】『家族法改正-婚姻・親子関係を中心に』(有斐閣)
ページ: 319-332