研究概要 |
1.本年度は、研究創作物を無方式主義の相対権等で「自動的に」保護する方法につき、様々な方向から検討を行った。 2.研究創作物の移転に関する契約(MTA)による研究創作物の保護の範囲を検証し、著作物に対する著作権法による保護の範囲との比較考衡を行った。米国の標準的生物材料移転契約(UBMTA)においてはMATERIALをORIGINALMATERIAL,PROGENY,およびUNMODIFIED DERIVATIVESと狭い範囲に限定しており、著作権の対象と極めて近いものがある。MODIFICATIONSについてもオリジナルな部分について原著作者の権利を留保している点など、著作物の扱いと近いものがあった。 3.米国におけるヒアリングでは、スタンフォード大学におけるno-MTA initiativeの試みの実態をヒアリングするとともに、日本の大学がこれに参入する可能性の検討を行った。 4.ワシントン大学(シアトル)におけるMTA手続きの電子化システムについてもヒアリング調査した。簡略化に一定のすぐれた効果は認められるものの、契約が基本となっているので抜本的な解決先とは言えず、またシステム構築自体にも課題の存在が想定された。 5.研究創作物の著作権保護の可能性について調査した結果、細胞や抗体を直接対象とした著作権保護については著作権法の成立経緯からしても困難性が確認された一方、遺伝子工学の成果としての側面からであれば、literatureの保護として可能なことが示唆された。すなわち米国では合成遺伝子の保護とコンピュータープログラムの保護との類似性を真摯に追求する研究がなされており、理論上は遺伝子配列の著作権保護に問題はないとする結論が導き出されていた。日本の著作権法も踏まえた妥当性・許容性の検討が次年度の課題となった。
|