本研究では、アメリカを参照事例に韓国における政権移行の過程を調査・分析した。分かったことは以下の2点である。第1に、同じく大統領制を採用していても、政権移行のパフォーマンスは米韓で大きく異なる。その差異には官僚制のあり方が関係している。猟官制をとり交代時に官僚が入れ替わるアメリカとそうではない韓国とでは、政権運営に関する「制度記憶」の継承に大きな違いが生じる。第2に、政権移行チームの存在が円滑な移行を阻害しうる。移行チームは本来円滑な移行を目的とする。政権移行チームは、本来、政権移行期の混乱を最小限にするために設けられるものであり、猟官制をとるアメリカにおいては政権交代に伴う制度記憶喪失を補完する装置であった。しかし、同様の装置を、制度的文脈が異なる韓国に置くと、逆に制度記憶の継承を阻害するよう機能してしまうことがある。
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