研究課題
本研究は、共生社会論の台頭と共に提起されつつある「新しい権利」論に関して、政治哲学と憲法学の知見を統合し、新しい分析装置を開発することを目指すものである。具体的には、本年度は、「新しい権利」論の典型例であり、憲法学と政治哲学の双方で共通関心が成立しつつある、文化的少数派の諸権利に関して以下の研究を行った。(1)本研究ではまず、憲法学の領域における文化的少数派に関する権利論研究の先行研究の全体的な構造を、政治哲学の議論と多面的に比較した。その結果、(1)こうした憲法学的と政治哲学的研究を比較した場合、新しい権利の具体的権利類型や、その担い手となる少数派文化の諸類型、各権利論の背景にある人間観・文化観等に関しては、大きな差異は見られないが、(2)憲法学的においては、権利実現の主たる舞台を司法権に求める点で、司法権と同時に議会等のより広い政治過程に求める政治哲学的な議論とは大きな差異が見られる、等の知見が明らかになった。(2)更に本研究では、憲法学的な議論の台頭とともに活発化した、文化的権利が個人権を阻害する可能性を巡る論点について、憲法・政治哲学両者の議論を比較した。その結果、本研究では、(1)憲法学的議論においては、集合的権利と個人権間の対立は、主として権利紛争管轄権の細分化によって調停されるという議論が有力であるが、(2)政治哲学的議論では、むしろ熟議によるコンセンサス形成という方法によって調停されるとする見解が有力である、等の新しい知見が得られた。
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Terrell Carver and Jens Bartelson (eds.), Globality, Democracy and Civil Society
ページ: 24-30
ページ: 46-63
神戸大学最前線-研究・教育・産学官民連携
巻: Vol. 13 ページ: 18