公共政策、地方政策、環境政策の評価のためにはヘドニックアプローチは極めて有効である。しかしながら、異質な消費者を扱わなかったため、代表的個人を想定できないプロジェクトの評価には問題が山積している。昨今の公共政策の評価のためには、多様な国民の同意が不可欠であり、本研究では異質な消費者の存在を前提としたヘドニックアプローチの理論の再検討と適用可能性を探る。 本研究では①異質な消費者が存在する場合、uniform national dividend scheme下で金本の一致定理がどの程度成立するかを検討した。一致定理のうち小プロジェク条件(zの変化がすくない)の極限で過大推定率が1に単調に収束しない可能性があることを示した。所有権のある場合について検討した結果、この場合も過大評価定理が成立することが判明した。さらに環境質が連続的に変化する場合にも拡張し同一の成果がえれれた。さらに②計量経済学的アプローチの新たな開発:計量経済学的方法論のリビューに基づき本研究では市場価格関数に分位点回帰を適用し単一市場から半固定自己相関ヘドニック関数を推定しようという新しい計量経済モデルを開発を試みたが、分位点回帰ではなく通常のセミパラメトリック手法での推定に成功した。その理論的解明は未解決に残った。③異質の消費者を前提としたキャピタリゼーション仮説の理論による過大推定率と計量経済モデルによる効用関数推定による便益評価の比較検討:1)2)の比較分析を行うため効用関数をヘックマンの開発した方法を用い東京のデータにより推定した。その結果、異質な消費者の存在によって、大幅に過大評価が高まる場合とそうでない場合があることがわかった。
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