めざましい経済発展を遂げつつある中国、インドなどアジア新興工業国に於いて所得中間層(ミドルクラス)が形成され、その数はますます増加しており、今後の発展メカニズムに与える影響は大きい。本研究では、比較参照する過去の典型的なミドルクラス出現の例として1960年代の日本を分析し、消費パターン変化の特徴と生産構造に与えた変化を産業連関分析によって明らかにした。次に具体例として、近年ミドルクラスの出現が顕著な中国について、文献および現地調査によってその実態を把握し、ミドルクラスを定義した。この定義に従って家計調査データを参考に近年の消費パターンの変化を階層別に検討し、ミドルクラスの需要パターンを明らかにした。その結果を用い、産業連関分析により、ミドルクラスが内需を拡大し、輸出主導型であった中国の発展パターンが内需と外需両者の主導型に変化する傾向にあることを示した。インドについても、ミドルクラスの定義と消費パターンの変化について検討し、中国よりは遅れたスピードであるがミドルクラスが出現しつつあることがわかった。この結果、消費財市場や流通構造に変化が起こっているが、産業連関分析では、ミドルクラスの出現が顕著になった最近のデータがまだ利用できないこともあり、顕著な産業構造変化への影響を析出できていない。
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