本研究の目的は、一国内で複数通貨が並行流通する競合通貨制の出現条件と効率性に関して、現金通貨流通量を計測した上で実証分析を行うことである。調査対象は、自国通貨Kip・タイバーツ・米ドルの3通貨が並行流通しているラオス人民民主共和国である。3年計画の初年度(2011年2月から3月)に、商店の受け取り(使用)通貨調査を、1特別区を除くラオス全16県で実施した。疑似パネルデータを作成するための2回目の調査は、2013年2月に実施する予定である。 3年計画の中間にあたる平成23年度は、初年度に収集したデータの入力と整備、理論構築の準備作業が中心であった。データ入力は、2011年8月9日から18日にかけて、申請者がVientianeを訪問し、現地大学生を雇用して集中的に行った。訪問期間中、作業を委任する学生の選択と指導は現地研究協力者Somchith Souksavath氏(ラオス国立大学経済経営学部副学部長)に一任し、申請者は、入力内容の確認に集中した。雇用した学生一人一日につき100件程度入力するのが限界であり、訪問期間中では全データの入力・チェックを完全に終わらせることができなかった。9月以降は、申請者本人が個人で入力作業を継続し、平成23年度末に、全7478枚の調査票の入力・チェックを完了させた。品目・受け取り通貨に関する簡単な表もいくつか作成した。タイバーツで希望小売価格が提示されたもの1092件に対し、米ドルで希望小売価格が提示されたものは90件しかなく、ドルが、主に預金通貨としてのみ機能するようになったことが分かった。 理論面では、ある種の競合通貨状況にあるともいえる、国際通貨に関する最新の研究をサーベイした。
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