日本においてリサイクル関連のイノベーションが低迷している。省エネ関連のイノベーションは環境規制に誘発され、規制とは関係ない領域で環境負荷低減につながるイノベーションが促進されているが、なぜ、リサイクル関連についてはうまくいかないのか。2020年までに温室効果ガス排出量を90年比で25%削減というチャレンジングな目標に達するためには、リサイクル法の見直し、リサイクル事業の再編が必要である。 本研究では、リサイクル関連のイノベーションの類型化、諸外国のリサイクル事業と政策の関係、リサイクル事業におけるイノベーション・システムの役割を分析し、リサイクル関連のイノベーションの低迷の原因を明らかにし、イノベーティブな循環型社会を目指す事業戦略及び環境政策の提案を行うことを目的とした。 平成22年度においては、リサイクル関連のイノベーション事例収集に注力した。また、主要な材料(紙、金属、プラスチック、ガラス)及び製品(自動車、空気調和機、カーペット、ペットボトル)について特許出願数の分析を行い、リサイクル・イノベーションの低迷を確認した。米国及び東南アジアにおけるリサイクルビジネスに関する事例調査を実施し、規制とイノベーションの関係についても基礎情報を収集することができた。 米国のカーペット関連のリサイクル・イノベーションについては、法規制を遵守しつつも、経営者の理念や競争力向上のための行動として推進されていることが明らかであるが、東南アジアの事例を分析すると、法規制は制定されつつあるが、それが一部の国際企業へ周知されつつあるものの、広く企業全体に周知されている状態になく、規制がリサイクル・イノベーションを促進するというメカニズムが働いてない可能性があることが示唆された。
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