研究課題/領域番号 |
22653040
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
古川 柳蔵 東北大学, 大学院・環境科学研究科, 准教授 (60420006)
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キーワード | 環境イノベーション / リサイクル法 / リサイクル事業 / 特許分析 / イノベーションシステム |
研究概要 |
日本においてリサイクル関連のイノベーションが低迷している。省エネ関連のイノベーションは環境規制に誘発され、規制とは関係ない領域で環境負荷低減につながるイノベーションが促進されているが、なぜ、リサイクル関連についてはうまくいかないのか。2020年までに温室効果ガス排出量を90年比で25%削減というチャレンジングな目標に達するためには、リサイクル法の見直し、リサイクル事業の再編が必要である。 本研究では、リサイクル関連のイノベーションの類型化、諸外国のリサイクル事業と政策の関係、リサイクル事業におけるイノベーション・システムの役割を分析し、リサイクル関連のイノベーションの低迷の原因を明らかにし、イノベーティブな循環型社会を目指す事業戦略及び環境政策の提案を行うことを目的とした。 平成23年度においては、中国(上海)及び東南アジア(タイ、インドネシア)へ訪問調査を実施し、リサイクル事業の事例調査及び政策との関係について分析を行った。特に、東南アジアにおいては、日本と東南アジアのリサイクル技術力の差があるものの、欧米及び日本企業はグローバルスタンダードの廃棄物処理技術を維持しており、主に外国(日系)企業を対象とした廃棄物処理事業が展開されているが、地域の環境問題を引き起こしている有害廃棄物については、日本企業のビジネス領域から外れてしまい、地域の環境問題解決への貢献と廃棄物処理事業の両立がまだ改善の可能性を残している。日本の廃棄物処理事業者は優位に事業展開を進めているが、東南アジアにおいては、法規制の運用上の問題が大きな課題となっていることから、日本企業によるCSR活動が重要な位置を占める。政府と地元企業、生活者の間に入り、CSR活動を進めることが、長期的に地元企業や生活者の環境問題を解決につなげる手法の一つとして捉えられている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東日本大震災の影響を受けて、平成23年度の開始は遅れたが、海外事例分析から重要なリサイクル事業の要件を見出すことができ、当初想定していたレベルにおおむね到達している。
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今後の研究の推進方策 |
大規模の特許データを用いた定量的な分析を今後大々的に進め、ケーススタディだけでは見えない示唆を得られるよう研究を推進したい。また、他大学のリサイクル関連研究者と深い議論を行うような機会を設定し、日本のリサイクル関連イノベーションが停滞している本質的な原因を追究する計画である。
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