研究課題/領域番号 |
22653041
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
渡辺 真一郎 筑波大学, システム情報系, 教授 (50282330)
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研究分担者 |
金澤 雄一郎 筑波大学, システム情報系, 教授 (50233854)
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キーワード | Big-5特性 / 治療的コミュニケーション / 患者満足 / 職務満足 / 看護パフォーマンス / 個人-職務フィット |
研究概要 |
Big-5性格特性(開放性、勤勉性、外向性、協調性、情緒的安定性)、看護行動、及び看護パフォーマンスの間の連関について分析した。産業職場を主な研究対象として発展してきた組織心理学分野の既存研究に基づく予測は、普遍特性とも呼ばれる勤勉性と情緒的安定性の2特性はパフォーマンスと正の連関を有するというものであった。看護師を対象とした本研究においても、勤勉性については類似の結果が得られた。しかし情緒的安定性とパフォーマンスの間には有意な連関は見い出されなかった。人命を扱う職場環境で働く看護師は、どのような状況においても情緒的安定を保ちつつケア看護を遂行していくことを職責として求められているからであろう。この興味深い結果は、人格心理学分野に対する貴重なとなろう。 また、特性→行動→パフォーマンス間の関係に関する様々な間接効果モデルが検定された。その成果の1つは、2012年度の米国心理学会の査読を通過した。タイトルは、When Nurses' Agreeableness Affects Patients' Satisfaction:A Mediating Role of Therapeutic Communicationと題された(5月にシカゴにて発表予定)。患者満足を促進するための治療的コミュニケーション、及びそのコミュニケーション・スキルを予測するための特性要因を明らかにすることが研究目的であった。その結果、治療的コミュニケーションを促進することによって患者満足度を増進し得る特性は協調性であることを明らかにし、看護師の採用管理における具体的貢献性について議論した。 さらに、個人-職務フィット(Person-Job Fit)と職務満足の間の関係を、日本とカナダで比較した。その結果、(1)経験年数は、日加両国において、両変数の分散を説明し得ないこと、(2)Person-Job Fitは両国において職務満足と正の連関を有すること、及び(3)カナダにおいては年齢は職務満足と正に連関するのに対し、日本では年齢と職務満足の関係が相互に独立であること、等の興味深い調査結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
同一の研究目的を達成することを明記した上で申請した基盤研究(B)が2011年に採択されたため、データ収集、分析等のための経費を賄うことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は本研究課題の看護サービス本研究課題の最終年度であるため研究成果を学術雑誌にまとめ、投稿することに重きを置くこととする。特に、患者満足に繋がる治療的コミュニケーションを規定すると考えられる心理学的個人差変数(外向性、協調性、親和欲求など)を明らかとする論文を執筆予定である。また、チームワークを助長する心理学的個人差要因と環境要因に関する論文をも執筆したい。さらに、現場で働く看護師が自身の看護行動を自己評定し、自身の強みと弱みを認識できるようなツールの開発に取り掛かりたい。
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