伝統的技能職の多くは世襲や徒弟制などによって選抜や教育が行われ、学校教育などの発展とは無関係にその養成システムを構築してきた。そしてその根幹となる人材確保や配置、技術向上を担うとともに、労働条件の改善に向けた取り組みを続けてきたのが同業者団体である。事例とした杜氏職においては、季節雇用から通年雇用への切り替えが進んでいることなどにより、技術継承や再生産のシステムに大きな変化が生じていた。同業者団体にとっては、その目的のひとつとしてきた労働条件の改善が進むにつれ、組合自体の存在意義が薄れるという自己矛盾に直面していることが明らかとなった。
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