2012年は引き続き現地調査を行い、論文を2本執筆した。また実施したインタビューのデータを編集しウェブサイトで公開した。今年度は特に娯楽メディアとテレビゲーム、ヴァーチャル・リクルーティング・センター、ミリタリーテーマパーク等がどのように社会の軍事化に影響を与えているのか調査・分析を行った。オランダのアムステルダム大学図書館とOpenBare Bibiliotequeで精力的に資料を収集し研究を行った。 本研究では社会形成の最も基本的な領域である「遊び」についても取り上げることとしていたが、2012年度は遊びが現代文化の中でどのように解釈されているのかについて、特に新自由主義の抽象的な概念がどのように軍や戦争をテーマとした娯楽に応用されているのかについても調査を行った。なかでも、主観、自我、ガバナンス、主権の概念が、娯楽メディアを通じてどのように形成されるのかについて研究を深めた。 またウェールズのアベリストウィス大学で行われたサイバー戦争に関するワークショップに参加した。ワークショップの目的は、サイバー戦争の構成要素とその定義は何かについて考察することであった。ワークショップでは、「侵入」、「盗聴」、「スパイ活動」、「重要なインフラの破壊」といった標準的な概念を検討したが、研究代表者はサイバー(仮想)の概念は実はデジタルメディアの領域に拡大されていることを提示した。すなわちシューティング・テレビゲームやミリタリーテーマパークは兵士の訓練に実際に役に立っており、また人々の政治的暴力に対する認識を形成し、再形成する強力な中間地としてのソフトパワーの役割を果たしているのである。 更に研究代表者は当該ワークショップ期間中に軍や戦争をテーマとしたビデオゲームがどのように既存のそして出現しつつある秩序というものを象徴しているのかについての基調講演を行った。
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